北方水滸伝を読み終わりました!
文庫版で読み始めたんだけど、毎月の発売日が待ち遠しかったです。
全19巻だけど冗長さは全くありませんでした。毎巻本当に面白く読まさせてもらいましたよ。
水滸伝は原作があります。
無実の罪を着せられた軍人や山賊などが梁山泊に集い、総勢108人の好漢(盗賊などもいるので好漢とは言えない気もするけどw)が、腐敗だらけで腐りきった宋国を懲らしめるというお話です。
原作では、各地にいた好漢108人が梁山泊に集まるのがハイライトだと思うのです。
しかし北方水滸伝では、それをあっさり覆します。
かなり序盤で好漢が戦死してしまうのです。この時点で108人が揃うことは有りえないんですよ。これには驚きました。
楊志も序盤で戦死してしまいます。あの楊志がこんな序盤で戦死するのかよ!と驚いたのですが、
考えてみると原作の楊志は地味でした。
名門の出ということもあり最初は出番は多かったけど、呉用の策略にハメられて宝物を奪われて罪人扱いになってしまいます。
流刑地では名士に重要されて運が上向きつつあったけど、些細ないざこざから人を殺してしまい行き場を無くして結果的に梁山泊へ入るわけです。
ここまでは楊志メインの話が多くて重要視されたけど、梁山泊に入ってからは活躍の場は全くありません。
たま~に名前が出るくるだけです。それを見て「あ、そういえば楊志っていたね」と思い出すくらいの存在ですw
しかし、北方水滸伝では楊志は凄い魅力的に書かれています。
養子の楊令を守りぬいて死んでいく最期は壮絶ですよ。
楊令の無事を見届けると燃え尽きたかのように死んでしまうのです。原作の地味な扱いが嘘のようです。
このように北方水滸伝は全ての登場人物が魅力的に書かれています。
原作のように戦後報告で死亡で終わりということは滅多にありません。
死ぬときは事前に人物のエピソードが出てくるので、死亡フラグが立ったことがわかるわけですがw
原作の水滸伝では108人の好漢が圧倒的に優秀で、宋国の軍人はやられ放題でした。
呼延尺や関勝など手強い軍人は、後になって梁山泊に入るので宋国は弱くなって梁山泊は強くなるばかり。
結果的に手がつけられない強さになった梁山泊に対して、宋国は恩赦という形で帰順させるわけです。
その後は宋国の良いように使われて疲弊してしまい、最終的には梁山泊は解体されてしまうわけです。
しかし北方水滸伝はそれでは面白くない!と思ったのでしょう。
原作では無能だった宋国の軍人がとにかく手強いのです!
最初の頃は梁山泊が相手を出し抜いてたけど、禁軍が出てくるようになると流れが変わってきます。
そして、禁軍を指揮して圧倒的な強さを見せ付ける童貫が戦場に出てくるようになると、梁山泊の旗色は一気に悪くなってきます。
梁山泊の国力は宋国に比べて貧弱です。国vs反乱軍だから兵力などの差は歴然としています。
原作では好漢108人の強さでそれを補っていたけど、北方水滸伝のように宋国の軍人が優秀だとツライところです。
特に童貫の強さといったらトンデモないのです。
ネタバレになってしまうので、まだ読んでない人のために詳しくは書けないけど、物語後半は梁山泊にとってかなり厳しい展開になります。次々と好漢が死んでいくので、最期のほうは読んでてツラかったっす(TДT)
これが作者が思う滅びの美学なんだと思います。志を持って戦った証なのだと。
しかし、北方水滸伝はこれで終わりではありませんでした。
「楊令伝」として続いていくのです。
タイトルのとおり、楊志の養子(ややこしいな)楊令が主人公となります。
全10巻刊行予定で現在5巻まで発売されています。
今までの北方水滸伝19巻も原作と全く違う展開なので驚きの連続だったけど、この楊令伝は本当に未知の世界が書かれることになるので驚きの連続だと思います。今から楽しみですよ!
そして、こういう話を書ける北方謙三氏が一番恐ろしいですね。
原作は妖術とか出てくる、ある意味なんでもありな話だけど、これほど真実味ある話に仕上げてしまうのは本当に凄いとしか言いようがありません。
もうかなりのお年のはずだけど、紙面からは北方謙三の気迫が伝わってくる気がします。
その気迫に負けないよう、これから楊令伝を読んでいこうと思っております。
占いは夢か現実か
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